2025.9.25
空き家バンク
移住したい地域がある程度まで絞り込めたら、住まいの検討も始めましょう。移住先の家は借りるのか、買うのか―まだ決めていない段階でも民間の不動産サイトと同時に、「空き家バンク」のサイトものぞいてみましょう。「空き家バンク」は、運営元が自治体であるという安心感と、自治体にもよりますがリフォーム費用の助成などがあります。
「空き家バンク」とは、空き家のオーナーと移住希望者を、地方自治体が間に入って希望条件を聞きながらマッチングするしくみです。民間の賃貸住宅を探す方法とは別に、多くの県や市町村が「空き家バンク」として、空き家物件情報を公式HPなどで提供しています。地方の人口減や空き家問題への対策の一つとして、移住促進や地域の活性化のために利用されています。

空き家バンクは、「空き家」を借りたい、買いたい人と空き家のオーナーが、自治体が運営するサイトに登録して利用します。庭や農地付きの物件や古民家など、民間の不動産サイトには出てこないような物件が掲載されていることも多いです。
自治体は基本的にマッチングするだけですが、地域の事情に詳しいことや交渉や契約について提携の不動産会社を紹介してくれる、自治体によっては契約の途中や後に問題が起こったときに専門家を紹介してくれるなど、スムーズに進められるメリットがあります。また、空き家の相談窓口や調査・案内などは地元の自治体職員が行っているので、その地域や家、交通アクセスやふだんの生活についても詳しい情報を得ることもできます。

移住者が空き家バンクを利用するには、家を借りるケースと買うケースがあります。中には当初は賃貸物件として借りて、気に入ったので後に購入した、というケースもあります。
希望の移住先が決まっている方は、移住を検討している市町村の公式サイト内にある「空き家バンク」を閲覧してみましょう。おおよその所在地や間取り、価格や面積などが掲載されています。
もし市町村のホームページに物件情報が少なくても、諦めないでください。移住希望先の「空き家バンク」の担当部署に直接問い合わせてみましょう。ホームページには載っていない、最新の物件情報を持っている可能性があります。
また、複数の自治体の空き家バンクを見てみたい場合は、こちらの全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集が便利です。
その他に、以下のような全国版の空き家バンクのサイトでも、各自治体の空き家バンク情報を検索できます。
多くの自治体では、空き家バンクの利用登録が必要です。身分証明書や納税証明書などの提出を求められることがあります。
気になる物件が見つかったら、自治体の担当部署に連絡し、内見を希望します。自治体職員や提携している不動産業者と一緒に現地を訪れ、物件の状態や周辺環境を確認します。
気に入った物件があれば、賃貸の希望を伝えたり、自治体が所有者に連絡して、購入交渉を進めたりすることになります。多くの場合、自治体が提携している宅地建物取引業者が仲介に入り、価格や引渡し条件などの交渉を行います。
自治体の仲介、または提携の宅建業者を通して、所有者と賃貸条件や修繕負担などについて交渉をします。賃貸借契約や売買契約を結ぶことになります。
購入の場合:交渉がまとまったら、宅地建物取引業者を通じて売買契約書を交わし、売買代金を所有者に支払います。空き家バンクの物件は比較的安価なことが多いため、一括払いのケースも多いようです。支払いが完了したら、所有権移転登記を行い、物件の引き渡しを行います。
賃貸の場合:契約内容に基づき、敷金、礼金(必要な場合)、初期費用を支払い、入居します。
借りる、買う側の移住者にとっては、空き家バンクは次のようなメリットがあります。
家賃や購入費用が一般の不動産物件に比べて格安に設定されていることが多いです。特に賃貸の場合、月数千円~3万円程度の物件も見つかることがあります。一般の不動産市場ではあまり見かけない古民家や畑付き物件など、個性豊かな物件に出会える可能性があり、リフォームの自由度も高いことが多いです。ただし、築年数が経った物件が多く、リフォーム費用がかさむ場合があります。
多くの自治体が、空き家バンク登録物件の契約者に対して、リフォーム費用、改修費用、家賃補助、引っ越し費用、住宅取得費用などの補助金制度を設けています。これにより、初期費用や生活費を抑えることができます。
空き家バンクは自治体が移住促進を目的として運営しているため、地域に溶け込むためのサポートを受けやすいです。空き家バンクを通して購入した家のオーナーが、引越し後の地域の人々への挨拶回りに一緒について来てくれて、自分たちを紹介してくれたので非常に助かった、という声もあります。
自治体が所有者と利用希望者の間に立ち、手続きをサポートしてくれるため、不透明な取引や悪質な業者が介在するリスクが低いというメリットがあります。また、空き家バンクは仲介業者を介さず、所有者と直接やりとりすることが多いです。そのため、物件の状態やこれまでの経緯、所有者の人柄などを直接確認でき、安心感につながります。それから、多くの自治体では、空き家バンク利用者を対象とした移住後の相談窓口や、地域との交流を促すサポート体制を設けています。これにより、物件の引き渡しだけでなく、新しい生活を始める上での不安も軽減されます。
空き家バンクの利用の注意点をまとめます。
・空き家バンクの登録物件数は自治体によってまちまちです。物件数が少なかったり、情報が更新されていなかったりして古い場合があります。
・空き家バンクに登録されている家は築年数の経った物件が多くなっています。傷んでいる箇所が多く見られ、リフォーム費用は借り主、購入者が負担することが多いです。とくに古い物件は現在の耐震基準を満たしていない場合が多く、耐震改修が必要になる場合があります。そのようなコストが高額になる場合もありますので、現地へ足を運んで内見、内覧をしっかりすることが大切です。ただし、現地へ行って内覧しても、目に見えない部分の劣化や不具合を見抜くのが難しいです。
・入居にあたってエアコンや給湯器などの設備を新規設置する必要があれば、どちらが費用負担するのかしっかりとりきめておきましょう。水回りのリフォーム、寒さ対策が必要なら断熱材費や断熱窓への交換などもどちらが費用をもつのか確認しておくことが重要です。その家の状態や気候によって変わってきますが、想像以上に費用がかさむ場合も少なくありません。
・空き家バンクを利用して物件を購入する際、自治体がマッチングして当事者間で契約する場合は不動産会社が仲介に入らないこともあり、その場合は仲介手数料がかかりません。しかし、個人間の取引は契約書の作成や重要事項説明などの専門的な知識が必要となり、トラブルが発生するリスクもあります。
多くの空き家バンクでは、自治体はあくまで情報提供やマッチングするのみで、実際の売買契約の仲介は、自治体と提携している地元の不動産会社が行います。この場合は、不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。不動産会社が仲介に入ることで、専門家による契約書の作成や重要事項説明が行われ、トラブルのリスクを減らすことができるメリットがあります。
・実際の家の様子を確認するのは現地で内覧することが必須です。しかし、空き家バンクの場合は基本的に、自治体は情報提供とマッチングにとどまり、不動産会社のようにまめに案内や仲介をしてくれないことが多いので、家の所有者に直接連絡して家の中を見せてもらうといった手間がかかります。賃貸、売買契約後のトラブルについても、自分で対応しなければならない場合があります。

空き家バンクを利用する最大のメリットは、助成金等の制度を利用できる可能性があることです。空き家バンクを利用して物件を借りたり、購入したりした人にはリフォーム費用などを自治体が助成する場合があります。助成金は自治体ごとに内容や適用の条件が異なります。
例えば山口県山口市では、空き家バンクに登録された空き家のリフォーム費用の一部を最大60万円補助しています。
また、広島県東広島市では、空き家バンクに登録された空き家のリフォーム費用の一部を上限50万円、人口減少地域については、30万円の上乗せ、という補助があります。また、登録された空き家の家財撤去費用に対しても補助金を支給しています。
リフォームや家財撤去以外にも、太陽光発電設備費や家庭用燃料電池(エネファーム)設置費、防犯対策など、住宅に対して各自治体がさまざまな補助金を支給しています。移住したい場所が決まったら、自治体のHPで確認してみてください。
福井県福井市「空き家取得支援事業」(30万円)や和歌山県有田市「空き家・空き地活用補助金」(上限50万円)、静岡県藤枝市「まちなか空き家バンク登録物件購入補助」(最大100万円)など、空き家バンクを通して購入した場合に補助金が支給されます。
長野県富士見町「移住&テレワーク支援制度」では、「富士見 森のオフィス」のコワーキングスペースを仕事場として利用する方に対して補助があります。(月額83,000円)
家の探し方は、空き家バンクがいいのか、民間の不動産会社がいいのかなど、移住を検討している場所によっても異なります。市区町村営の住宅を紹介してもらった方やどのサイトにも載っていない口コミで家の情報を得た方もいます。希望の移住先が決まったら、各自治体の移住相談員や移住コンシェルジュに、自分の仕事や家族の状況などをもとに個別に相談してみましょう。RASINOにもお気軽にご相談ください。