東京圏の人だけじゃない?対象地域広がる「移住支援金制度」

東京圏の人だけじゃない?対象地域広がる「移住支援金制度」

移住支援金制度は地方への移住をあと押しする制度で、大きく分けて「移住支援金」と「起業支援金」があります。これらはもともと住んでいるところや通勤しているところ、移住先の地域や就職先などの条件に合った方が受け取ることができます。今回は「移住支援金」についてご紹介します。

1.支給金額はどのくらい?

移住先となる自治体により違いがありますが、もっとも一般的な支給金額は、単身での移住で最大60万円、世帯での移住で最大100万円というものです。さらに、18歳未満の⼦どもも移住する場合は、子ども1⼈あたり最⼤100万円の支援金が支給される、というケースす。

移住先となる都道府県・市町村によって異なることがあるので、事前に移住を検討している自治体にご確認ください。

2.移住支援金を受け取れる人はどんな人?

「移住支援金」は、東京一極集中の是正と、地域の中小企業等における人手不足の解消のために、移住者の方の経済的な負担を減らして、UIJターン促進と中小企業等の人材を確保するために国によって2019年度に導入されました。

よって、東京23区に在住、または東京圏から東京23区へ通勤している方が、東京圏外に移住し、起業や就職、または移住前の仕事を継続してテレワークすることなどで受け取ることができる、というのが基本です。

移住支援金の文脈で東京圏とは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の一都三県のうち、条件不利地域の市町村が除かれた地域を意味します(たとえば東京都小笠原村は東京圏ではないということになります。さらに、小笠原村は移住支援金の事業を行っているため、東京23区から小笠原村への移住を検討している場合、移住支援金支給の対象となりえます)。

東京圏

該当する都道府県

東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県(一都三県の条件不利地域の市町村を除く)

一都三県の条件不利地域

東京都

檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村

埼玉県

秩父市、飯能市、本庄市、越生町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町

千葉県

銚子市、館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、栄町、多古町、東庄町、九十九里町、芝山町、横芝光町、白子町、長柄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町

神奈川県

三浦市、山北町、箱根町、真鶴町、湯河原町、清川村

また支給金額と同様に対象者についても、移住先となる都道府県・市町村によって条件がさまざまに異なることがあるので、事前に移住を検討している自治体にご確認ください。基本的な条件としては次の通りです(繰り返しますが、移住先の自治体により条件が異なることがあります)。

以下の①〜③をすべて満たす方:

①【移住元】東京23区に住んでいる、または東京圏から東京23区へ通勤している方

  • 移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住または東京圏(条件不利地域を除く)に在住し、東京23区へ通勤(※1)している。ただし、直近1年以上は、東京23区に在住または通勤していること。
  • 東京圏(条件不利地域を除く)に在住しつつ、東京23区内の大学等へ通学し、東京23区内の企業等へ就職した者については、通学期間も本事業の移住元としての対象期間に加算可能。

(※1) 雇用者としての通勤の場合にあっては、雇用保険の被保険者としての通勤に限ります。

②【移住先】東京圏以外の移住支援事業実施自治体または東京圏の条件不利地域への移住であること

移住支援金の申請が転入後1年以内、申請後5年以上は継続して移住先市町村に居住する意思があること、など。

③ 地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的起業などを実施など

以下のどれかにあてはまる必要がある。

  • 地域で中小企業等へ就業
  • 移住支援金の対象として人材マッチングサイトに掲載されている求人に就業すること。
  • プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業すること。
  • テレワークによる業務継続

  • 地方創生 移住支援金 (リンク

3.大阪、愛知、福岡など東京圏以外も対象が拡大する動き 

2章でご紹介したように、移住支援金は東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)からの移住者を主な対象としています。しかし、自治体によっては東京圏以外の大都市(名古屋圏や大阪圏など)や、近隣県などに対象を拡大し、移住支援金やそれに準ずる支援策を独自に実施するところが増えてきています。東京圏以外からの移住でも移住支援金の対象となる支援事業を行っている自治体をご紹介します。

長野県「UIJターン就業・創業支援金」

東京圏、愛知県、大阪府から長野県に移住して、要件を満たした方に移住支援金を支給しています。

◎ 支給金額は世帯最大100万円、単身60万円または30万円です。また、2人以上の世帯で18歳未満の子どもも移住する場合は、子どもの人数に応じて加算される場合があります。

  • 長野県「UIJターン就業・創業支援金」(リンク)

宮崎県「移住支援金制度」

東京圏、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)、福岡県から宮崎県に移住して、要件を満たした方に移住支援金を支給しています。

◎ 支給金額は世帯最大100万円、単身は60万円または30万円です。また、18歳未満の子どもも移住する場合は、子ども1人につき最大100万円が加算される場合があります。

◎ 転入先の市町村に、移住支援金の申請日から5年以上居住する意思があること、就職のマッチングサイト(ふるさと宮崎人材バンク等)掲載の移住支援金対象求人に応募して就職する、などの条件があります。

山口県「移住支援金」

東京圏から山口県に移住して要件を満たした方、2人以上の世帯100万円(18歳未満の子ども1人につき100万円加算)、単身の方に60万円支給しています。

◎ また、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県から山口県に移住して要件を満たした方に2人以上の世帯で50万円(18歳未満の子ども1人につき50万円加算)、単身の方に30万円支給しています。

山口県「やまぐち創生テレワーク移住補助金」

愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県から山口県へ移住し、要件を満たした方に移住支援金(世帯:50万円、単身:30万円)を支給します。また、18歳未満の子どもも移住する場合は、子ども1人につき50万円が加算される場合があります。

詳細な条件は次の通りです。

住民票を移す直前の10年間のち、通算5年以上、東京圏(※)、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県又は福岡県に在住していた、住民票を移す直前に、連続して1年以上、東京圏、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県又は福岡県に在住していたなど。

  • 山口県「Ujiターン・やまぐち創生テレワーク移住補助金」(リンク)

福島県「12市町村移住支援金」

◎ 福島県内を除く全国から12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村に移住して、要件を満たした方に移住支援金を支給しています。

◎ 支給金額は世帯200万円、単身120万円です。連続して3年以上、東京圏に在住し、18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合、18歳未満の子ども1人につき100万円が加算されます。

◎ 医療・介護・福祉等の職種に就業された方は1人あたり120万円加算されます。

  • 福島県「12市町村移住支援金」(リンク)

大分県「移住支援金」

大分県外から大分県に移住して(大分県出身を含む)要件を満たした方に移住支援金(2人以上世帯の場合:100万円、単身の場合:60万円)を支給しています。

◎ 2025年10月1日以降の申請から、東京圏以外からの移住の場合は39歳以下、または18歳未満の子どもがいる子育て世帯が対象となります。

その他、福井県や岐阜県など、一部の自治体では東京圏以外からの、県外からの移住について移住支援金以外に、住宅補助、家賃補助、子育て支援金、就業支援金などの名称で、さまざまな支援金を給付しています。詳しくは各自治体のホームページをご確認ください。

4.移住支援金について知っておくべき注意点

移住支援金の支給には、上記までに挙げた自治体による違いや様々な条件、その他の注意点があります。整理しておきましょう。

対象になる方――「雇用保険の被保険者」か「個人事業主」

基本的には下記の条件が付されているケースが多く、東京23区に通勤していたとしても「雇用保険の被保険者」か「個人事業主」であることが求められているのがとくにポイントです。

  • 住民票を移す直前の10年間のうち、通算5年以上、東京23区に在住又は東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の条件不利地域以外の地域に在住し、かつ、雇用保険の被保険者または個人事業主として東京23区に通勤していた方
  • 住民票を移す直前に、連続して1年以上東京23区内に在住又は東京圏のうちの条件不利地域以外の地域に在住し、雇用保険の被保険者または個人事業主として東京23区に通勤していた方

対象になる移住先――移住支援金事業に参加していない市町村もある

そもそも移住先が「移住支援金事業に参加している市町村」でないと、移住支援金は受け取れません。検討している移住先が参加しているかどうかの確認が要ります。たとえば京都府京都市、愛媛県松山市、福岡県福岡市、沖縄県那覇市などは移住支援金事業を実施していません。

2025年4月1日現在で、地方創生移住支援事業を実施している/していない市町村はこちらから確認できます。

  • 地方創生2.0 移住支援金 (リンク)

同じ都道府県内でも、市町村によって制度の有無や内容、対象、条件が異なります。移住を検討している市町村の公式サイトを必ず確認してください。

対象になる仕事――どんな求人でも対象になるわけでない

仕事については、どんな就職先でもよいわけではなく、自治体が運営するマッチングサイトに求人情報を掲載している企業などの限定条件があります。移住支援金対象の求人は各自治体が運営している人材マッチングサイトやこちらから探すことができます。

  • 地方創生2.0 ふるさと求人を探す (リンク)

たとえば山口県における就業の場合は、以下のような条件があります。

  • 『やまぐち移住就業マッチングサイト』に掲載されている対象求人(週20時間以上の無期雇用契約の求人)に新規就業した方。
  • 対象の法人が、官公庁等でないことや資本金10億円以上の営利を目的とする私企業ではないこと、雇用保険の適用事業主であること。

  • やまぐち移住就業マッチングサイト (リンク)

予算に上限があり、早いもの勝ちということがある

移住支援金には、予算に上限があります。市町村ごとに移住支援金のために設けた予算の枠があり、あらかじめ設定した予算額に達するとその年度の支給が終わってしまいます。移住したらなるべく年度の早い時期に申請する方がいいでしょう。また、多くの支援金の申請が転入後1年以内となっています。

返還しなければならないケースがある

虚偽の申請をした場合や実際に居住が確認できない場合、移住支援金の申請から3年以内に移住先から転出した場合、1年までに離職した場合などは全額返還、あるいは移住支援金の申請日から3年以上5年以内に転出した場合は半額返還など、交付した移住支援金を返還しなければなりません。

税申告の必要があるケースがある

移住支援金は、所得税と個人住民税の課税対象なので、一次所得として他の所得と合算し、確定申告をする必要があります。

上記のように、移住支援金は、どこの自治体でも支給しているわけではなく、対象となる方や仕事、その条件は自治体によって異なります。また、移住支援金にあてる年度の予算が決まっており、移住人気の高い自治体では、年度の早々に上限に達し受付終了となることもあります。移住に関心がある場合は早めに各自治体の移住相談員や移住コンシェルジュに、個別に相談するようにしましょう。RASINOにもどうぞお気軽にご相談ください

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