起業支援金とは?――予算には上限があり、早ければ2ヶ月で申請締め切りも

起業支援金とは?――予算には上限があり、早ければ2ヶ月で申請締め切りも

移住支援金制度は、地方への移住をあと押しする制度で、大きく分けて「移住支援金」と「起業支援金」の2種類があります。これらの支援金は、もともと住んでいるところや通勤しているところ、移住先の地域や就職先などの条件に合った方が受け取ることができます。今回は、地域課題の解決に繋がる事業を起業すると支給を受けられる「起業支援金」についてご紹介します。

  • 移住支援金についてはこちら(リンク

1.支給金額はどのくらい?

起業支援金の支給金額は最大200万円で、移住支援金と組み合わせることができます。

移住先となる都道府県・市町村によって異なることがあるので、事前に移住を検討している自治体にご確認ください。

2.「起業支援金」とは?

「起業支援金」は、地域の課題を解決するための起業を目的としたUIJターン促進のために作られた制度です。政府が推進する地方創生事業の一環として、各地で展開されており、対象となる地域課題としては高齢化や人口減少、医療・福祉の不足、買い物難民問題などが挙げられます。

「起業支援金」は、すべての都道府県が行っている事業ではなく、2025年度(令和7年度)は、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府以外の43道府県が実施しています。道府県によってそれぞれ起業支援金制度の名前がつけられているので、調べるときは注意が必要です。

たとえば以下のような名称になっています。

富山県

起業なら富山!創業移住支援事業

長野県

ソーシャル・ビジネス創業支援金(長野県地域課題解決型創業支援事業)

広島県

広島県地域課題解決型起業支援事業

山口県

やまぐち創業補助金

愛媛県

愛媛グローカルビジネス創出支援事業費補助金

3.支給対象の事業は?

起業支援金を受けられる「起業」には、自分で新たに起業する場合と事業承継または第二創業(中小企業が新規事業を立ち上げたりすること)する場合の2種類があります。それらの事業は、ただ何でも新しく事業を始めればいいというわけではなく、以下のような地域の課題を解決する「社会的事業」であることが求められます。

地域の課題解決につながる事業

子育て支援

放課後児童クラブ、保育サービス、子どもの遊び場づくり、子育て世代向けの交流スペースなど。

買い物弱者支援

移動販売、オンラインストアの構築、宅配サービスなど、高齢者や交通手段を持たない人々の買い物を支援する事業。

空き家活用

空き家を改修してカフェ、ゲストハウス、シェアオフィス、コミュニティスペースなどとして活用する事業。

まちづくり

地域住民が交流できる拠点づくり、イベントの企画・運営、地域の魅力を発信する事業など。

高齢者支援

見守りサービス、生活支援サービス、健康増進プログラムなど。

地域資源を活用した事業

地域産品の活用

農産物、海産物、伝統工芸品などを活用した加工品製造、レストラン、特産品の販売など。

観光関連事業

地域の自然や文化を活かした体験型観光、宿泊施設の運営、ガイドサービスなど。

伝統産業の継承・発展

衰退しつつある伝統技術や産業を、新しい形で再興・発展させる事業。

Society 5.0関連の付加価値の高い事業

IT関連事業

地域の中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援、ウェブサイト制作、アプリ開発など。

スマート農業

IoTやAIを活用した効率的な農業。

伝統産業の継承・発展

オンラインでの医療相談サービスや教育サービスなど。

[補足] Society 5.0とは

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報化社会(Society 4.0)に続くとされる。(内閣府)

このような「社会的課題の解決を目指す事業」というと、ハードルが高いように感じますが、実際に採択された例を見てみると、飲食店で地元の食材を使ったメニューを提供し「地産地消」や高齢者の居場所づくりに繋げたり、IT関連事業として動画制作会社を立ち上げるなど、事業の内容は幅広く解釈できるものと考えられます。

たとえば起業支援金の採択事例として、次のようなものがあります。

起業支援金の採択事例

岡山県高梁市

「備中高梁まなびラボ」構想(Happy Collaboration 合同会社)

市中心部にある築約100年の建物をリノベーションし、コワーキングスペースやイベント貸し出し、サテライトオフィスの利用を通じて地域の活性化を目指す事業。

長野県上伊那郡中川村

「株式会社ぽれぽれ」

長野県「ソーシャル・ビジネス創業支援金」。高齢化が進む地方における医療・介護サービスの不足を解決するため、地域住民の生活を支える訪問看護事業を起業。

栃木県足利市

「スキルモール」

子育て家庭向けの地域特化型のスキルシェアサービス「スキルモール」を起業。栃木県「地域課題解決型創業支援補助金」や足利市「創業者ステップアップ補助金」を活用。

滋賀県草津市

「株式会社青亥」

草津市の市花「あおばな」を使った天然青色色素の製造販売事業。

山梨県富士吉田市

「株式会社スマナビ」

起業支援金(やまなし地域課題解決型起業支援金)。民泊運営の少人化やリモート化を始めとするDX推進に関するデジタルソリューションの提供。

佐賀県佐賀市

「oriori」

佐賀県地域活性化等起業支援事業費補助金。世代を超えた出会いは宝物を増やす」をテーマに、古道具・洋裁屋兼喫茶店「oriori」を経営。

京都府舞鶴市

「株式会社Muroji-farm」

京都府の「起業支援事業費補助金」。室牛地区の活性化を目指すブルーベリー観光農園の運営。

高知県南国市

「株式会社REALab.Works」

高知県創業支援事業費補助金(現 高知県地域課題解決起業支援事業費補助金)」。高知県の特産品であるゆず栽培の夏場の防除作業に農業用ドローンによる農薬散布サービスを提供。

岡山県倉敷市

「テンマップス株式会社」

「岡山県地域課題解決型起業支援金」。福祉タクシーからスタートし、老人ホームへの入居に伴う高齢者への総合終活ワンストップサービスを提供。

鹿児島県奄美市

「合同会社KAZAMI」

鹿児島県の「かごしま地域課題解決型起業支援事業」。奄美大島でコワーキングスペースや自習室として利用可能なライフ&ワークスペース「Living AMAMI」を運営。

山口県長門市

「株式会社Neo Blue Distillery」

県産ハーブを使用したクラフトジンの製造・販売。

山口県山口市

「やまぐちシードル」

「徳佐りんご」を使った発泡性果実酒の醸造・販売。

広島県広島市

「酒処 紘じん」

Uターン移住後、地域の方々にとって心安らぐ「憩いの場」となることを目指して居酒屋を経営。

富山県高岡市

「株式会社Fortune Peaks」

「富山!創業・移住支援事業補助金」。地域資源を活用した共創型企業PR・ブランディング支援事業。

岐阜県

「訪問美容サービスSANKAKU(サンカク)」

「岐阜県地域課題解決型起業支援金」。地域密着型訪問美容サービス事業。

4.支給対象者の条件は?

自治体や地域によって異なりますが、基本の支給対象条件は次のようになります。

対象者① 新たに起業する場合(次のすべてを満たすことが必要)

  • 東京圏以外の都道府県や市町村又は東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと。
  • 国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届又は法人の設立を行うこと。
  • 起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること。

対象者② 事業承継又は第二創業する場合(次のすべてを満たすことが必要)

  • 東京圏以外の都道府県や市町村又は東京圏の 条件不利地域において、Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野で、社会的事業を事業承継又は第二創業により実施すること。
  • 国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、事業承継又は第二創業を行うもの。
  • 本事業を行う都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること。

東京圏

該当する都道府県

東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県(一都三県の条件不利地域の市町村を除く)

一都三県の条件不利地域

東京都

檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村

埼玉県

秩父市、飯能市、本庄市、越生町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町

千葉県

銚子市、館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、栄町、多古町、東庄町、九十九里町、芝山町、横芝光町、白子町、長柄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町

神奈川県

三浦市、山北町、箱根町、真鶴町、湯河原町、清川村

山口県と広島県の例

詳細な条件は自治体によって異なりますが、ここでは山口県と広島県を例に挙げてみます。たとえば山口県の「やまぐち創業補助金」の支給対象は、山口県へ移住(予定を含む)した東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)、中京圏(愛知)、近畿圏(京都、大阪、兵庫)、広島県、福岡県の在住者になります。

広島県の広島県起業支援金の支給の条件は次の通りです。

広島県起業支援金の支給条件

  • 広島県に住民票を移す直前に、連続して1年以上、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県)に在住していたこと。
  • 移住先が広島県内であること。
  • 移住時期が、起業支援事業の交付申請時において広島県内に移住後1年以内であること、または当該年度における完了日までに広島県内に移住することのいずれかに該当すること。

こちらの支給対象の条件についても各自治体に確認が必要です。

5.起業支援金の注意点

上記に挙げたように起業支援金の支給には対象の自治体、事業内容、対象となる人についてさまざまな条件があります。起業支援金の支給についての注意点をまとめます。

2025年度(令和7年度)は43道府県が実施

「起業支援金」は、すべての都道府県が行っている事業ではなく、2025年度(令和7年度)は、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府以外の43道府県が実施しています。また、自治体によって支援金の名称が異なります。

予算には上限があり、早ければ6月に終了!

起業支援金の支給における最大の注意点は、起業支援金は予算に上限があることです。道府県、市町村ごとに移住支援金のために設けた予算の枠があり、設定した予算額に達するとその年度の支給が終わってしまいます。早いところだと、年度が始まってから2ヶ月程度、6月で終了してしまいます。移住した年度の申請がすでに終了していた場合、前年度に申請したかった人が、次年度が始まってすぐに申請し、そこで予算を使い切ってしまうからです。起業支援金の申請は、余裕を持って計画を立てるようにしましょう。

自治体によって、元の居住地や年齢、事業内容などさまざまな条件がありますので、対象自治体のHPなどでご確認ください。

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